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5 保証人の求償権 (1) 委託を受けた保証人の事後求償権(民法459条)

民法第459条第1項は,委託を受けた保証人が弁済等によって主債務を消滅させた場合の事後求償権について規定しているところ,委託を受けた保証人が期限前弁済をした場合については,委託の趣旨に反することがあることから,委託を受けない保証人の事後求償権と同内容のもの(同法第462条第1項参照)で足りるとする見解がある。 この点について,どのように考えるか。

[意見]賛成する。

[理由]補足説明のとおり。

5 保証人の求償権 (2) 委託を受けた保証人の事前求償権(民法460条・461条)

民法第460条は,委託を受けた保証人が事前求償権を行使することができることについて定めるが,仮に,同法第455条を債権者が主債務者の財産に対して適時に執行をすることを怠ったために主債務者からの弁済額が減少した場合一般に適用される規定に改める場合(前記4(1)イ参照)には,委託を受けた保証人に事前求償権を認める必要性は失われるとの指摘もある。 この点について,どのように考えるか。

[意見]委託保証人の事前求償権は必要は無いというべきである。

[理由]補足説明のとおりである。

なお,補足説明4の保証会社が事前求償権を行うことが必要であるという反論は,保証会社を取立機関とするということを前提とするものであって,このような保証会社の取り立て行為を幅広く認めることは,保証会社の存在意義すら疑問を呈さざるを得ないものである(実質的には弁護士法72条の潜脱を意図しているとしか言い得ない)。

5 保証人の求償権 (3) 委託を受けた保証人の通知義務(民法463条)

民法第463条第1項は,求償権を行使しようとする連帯債務者の事前・事後の通知義務に関する規定である同法第443条を準用しているところ,連帯債務においては,連帯債務者は,履行期が到来すれば直ちに弁済をしなければならない立場にあるのであるから,その際に事前通知を義務付けるのは相当ではないとして,事前通知義務を廃止するかどうかが検討されている(前記第12(2)ウ(イ)参照)。 連帯債務者の事前通知義務の存廃に関して指摘されている理由は,委託を受けた保証人についても該当し得るものであることから,委託を受けた保証人についても,事前通知義務を廃止するかどうかを検討することが考えられるが,どうか。

[意見] 賛成する。

[理由] 連帯債務とおなじ。

5 保証人の求償権 (4) 委託を受けない保証人の通知義務(民法463条)

民法第463条第1項は,求償権を行使しようとする連帯債務者の事前・事後の通知義務に関する規定である同法第443条を準用している。 ところで,事前通知義務の趣旨は,債権者に対抗することができる事由を有している主債務者に対し,それを主張する機会を与えようとすることにあるところ,委託を受けない保証人については,もとよりその求償権の範囲は,主債務者が「その当時利益を受けた限度」(同法第462条第1項)又は「現に利益を受けている限度」(同条第2項)においてしか認められておらず,主債務者が債権者に対抗できる事由を有している場合には,それについては「利益を受けている限度」から除外されることになるため,事前通知義務の存在意義は乏しい。 そこで,委託を受けない保証人については,事前通知義務を廃止するという考え方があるが,どのように考えるか。

[意見] 賛成する。

[理由] 補足説明のとおり。

民法改正(債権関係・債権法)に関する意見書です。ご自由にご覧ください。