« | »

2 債務者が複数の場合 (2)連帯債務 ウ 求償関係

ウ 求償関係

現行民法は,第442条から第445条までに連帯債務者間の求償関係についての規定を置いているところ,これを見直すに当たり,どのような点に留意すべき点か。

(ア) 一部弁済の場合の求償関係

民法第442条は,「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たとき」の求償関係について規定しているところ,連帯債務者の一人が一部弁済をした場合の求償関係は必ずしも明確ではない。とりわけ,求償権の発生のために自己の負担部分以上の出捐をする必要があるかどうかについては,議論のあるところである。 この場合の求償関係について,判例は,連帯債務者の一人が自己の負担部分に満たない弁済をした場合であっても,他の連帯債務者に対して割合としての負担部分に応じた求償をすることができるとしている。 そこで,連帯債務者の一人が一部弁済をした場合に他の連帯債務者に対して割合としての負担部分に応じた求償をすることができることを条文上も明らかにすべきであるという考え方があるが,どのように考えるか。

[意見] 割合により求償可能なことを明文化すべき。

[理由] 補足説明のとおり。

(関連論点)

民法第442条は,「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たとき」の求償関係について規定しているところ,債務者の一人が代物弁済や更改後の債務の履行をした場合の求償関係は必ずしも明確ではない。 この点について,代物弁済や更改後の債務の履行をした連帯債務者は,その出捐額が共同免責額以上である場合には,共同免責額以上に他の連帯債務者に対して求償することはできず,他方,その出捐額が共同免責額を下回る場合には,出捐額を基に割合としての負担部分に応じて他の連帯債務者に対して求償することができると解するのが一般である。 そこで,連帯債務者の一人が,代物弁済や更改後の債務の履行をした場合に,他の連帯債務者に対して,出捐額を限度として,割合としての負担部分に応じた求償ができることを条文上も明らかにすべきであるという考え方があるが,どのように考えるか。

[意見] 同様に割合により求償可能なことを明文化すべき。

[理由] 補足説明のとおり。

(イ) 通知を怠った連帯債務者の求償の制限等(民法443条)

民法第443条第1項は,求償権を行使しようとする連帯債務者に他の連帯債務者への事前の通知を義務付ける趣旨の規定であるが,これに対しては,連帯債務者は,履行期が到来すれば,直ちに弁済をしなければならない立場にあるのであるから,その際に事前通知を義務付けるのは相当ではないとの批判的な見解もある。 そこで,事前通知義務を見直すことが考えられるが,どのような点に留意すべきか。また,事前通知義務を廃止する場合には,どのような手当てが必要となるか。

[意見] 事前通知義務を定めた民法443条1項は廃止すべきである。また,廃止に伴う手当として,民法443条2項の事後の通知が無い際の後弁済者の弁済を有効とみなす規定を,先弁済者からの求償と,弁済の通知の先後関係により優劣を決する規定を設けるべきである。

[理由] 各連帯債務者はそれぞれ履行期が到来すれば直ちに支払わなければならない義務を負っているのであり,事前通知義務の負担は過大である。また,連帯債務者が多数の場合に通知を出すのは非常に負担が大きい。また,そもそも連帯債務といえども別個の債務であるから,通知を必要とする必要性が乏しい。ただし,1項のみを廃止してしまうと遅いもの勝ちとなる危険があり,調整規定を設けることが必要である。

(関連論点)

連帯債務者間の通知に関しては,他の連帯債務者の存在を認識できない場合にまでこれを要求するのは酷であるとの指摘もある。 連帯債務が成立する関係にありながら,他の連帯債務者の存在を認識できないというのは,例外的な事態であるとは思われるが,共同不法行為の場合等には,起こり得ないことではない。 連帯債務者間の通知に関して,他の連帯債務者の存在を認識できない場合には,その義務を課さないことも考えられるが,どうか。

[意見] 賛成する。

[理由]補足説明のとおり。

(ウ) 負担部分がある者が無資力である場合の求償関係(民法444条前段)

民法第444条前段は,「連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。」と規定するが,負担部分のある連帯債務者がすべて無資力の場合の処理は必ずしも明確ではない。 この点について,判例は,負担部分のある連帯債務者がすべて無資力である場合において,負担部分のない複数の連帯債務者のうちの一人が弁済等をしたときは,求償者と他の資力のある者の間で平等に負担をするとしている。 そこで,このことを条文上も明らかにするという考え方があるが,どのように考えるか。

[意見] 判例理論を明確にすべきである。

[理由] 判例の考え方を条文上も明らかにするものであり,反対する理由がない。

(エ) 連帯の免除

民法第445条は,連帯債務者の一人が連帯の免除を得た場合に,他の連帯債務者の中に無資力である者がいるときは,その無資力の者が弁済をすることのできない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分は,債権者が負担すると規定する。 しかし,この規定に対しては,連帯の免除をした債権者には,連帯債務者の内部的な負担部分を引き受ける意思はないのが通常であるとして,削除すべきであるとする見解がある。 この点について,どのように考えるか。

[意見] 連帯の免除の規定は削除すべき。

[理由] 補足説明のとおり。

民法改正(債権関係・債権法)に関する意見書です。ご自由にご覧ください。