3 債権者が複数の場合 (1) 分割債権

民法第427条は,分割債権について,別段の意思表示がなければ,各債権者は平等の割合で権利を有することを規定しているところ,この規定については,内部関係(債権者間の関係)ではなく対外関係(債務者との関係)を定めたものであると解されている。すなわち,例えば,債権者間で平等でない内部関係の割合の合意があったとしても,債務者との関係でその旨の別段の意思表示がなければ,債務者との関係では平等の割合による分割債権となる旨を定めているということである。しかしながら,そのことは,条文の文言からは必ずしも明確ではないと指摘されている。 そこで,条文上もこの点を明確にすべきであるという考え方があるが,どのように考えるか。

[意見]明確にするべき

[理由]実務上当然の前提となっている内容を条文上明記するものであり,特に問題点が見あたらない。

3 債権者が複数の場合 (2) 不可分債権―不可分債権者の一人について生じた事由の効力(民法429条1項)

民法第429条第1項は,不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合でも,他の不可分債権者は債務の全部の履行を請求することができるが,更改又は免除により債権を失った不可分債権者に分与すべき利益は,債務者に償還しなければならないことを規定している。 この規定については,更改又は免除の場合のみならず,混同や代物弁済の場合にも類推適用されるとする見解がある。 このような見解を踏まえて,民法第429条第1項について,不可分債権者の一人と債務者との間に混同や代物弁済が生じた場合についても適用されるものとするかどうかを検討することが考えられるが,どうか。

[意見]賛成する。

[理由]補足説明のとおり。

3 債権者が複数の場合 (3) 連帯債権

現行民法は,債権者が複数である債権債務関係について,分割債権(同法第427条)及び不可分債権(同法第428条,第429条,第431条)の規定を置くのみであるが,このほか,復代理人に対する本人と代理人の権利(民法第107条第2項)や,転借人に対する賃貸人と転貸人の権利(民法第613条)について,連帯債権という概念を認める見解もある。この連帯債権に関する規定を新設するという考え方があるが,どのように考えるか。 ところで,連帯債務における絶対的効力事由を絞り込むこととした上で,債権の目的が不可分給付であるか可分給付であるかによって不可分債務と連帯債務とを区別することにするのであれば(前記2(3)参照),債権者が複数である債権債務関係についても,債権の目的が不可分給付であるか可分給付であるかによって不可分債権と連帯債権とを区別するような整理をすることが考えられる。連帯債権に関する規定を新設する場合に,このような概念の整理をすることについて,どのように考えるか。

[意見]連帯債権の新設に賛成。債権の目的たる給付の内容が可分か否かで,不可分債権,連帯債権に分類する意見に賛成。

[理由]新設する必要性が高いとは言えないが,概念,分類を条文から分かりやすいものとする観点からは有用と考える。また,新設することによる不都合も特に考えにくい。不可分債権,連帯債権の分類についても同様と考える。

(関連論点)

民法第431条は,不可分債権が可分債権となったときは,各不可分債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求できると定めているところ,不可分債務について,当事者間に反対の特約がある場合には,債権の目的が不可分給付から可分給付となったときに,分割債務ではなく連帯債務となることを認めるのであれば(前記「2(3) 不可分債務」(関連論点)参照),不可分債権についても,当事者間に反対の特約がある場合には,債権の目的が不可分給付から可分給付となったときに,分割債権ではなく連帯債権となることを認めてよいように思われるが,どのように考えるか。

[意見]賛成

[理由]不可分債務の可分化の論点と同様に,可分となったときに,分割債務ではなく連帯債務となる特約を有効に認めたものであるから,当事者意思の反映に役立つし,特に不都合もない。

民法改正(債権関係・債権法)に関する意見書です。ご自由にご覧ください。