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保証問題を検討する際に,参照すべき判例について

参考判例

1. 連帯保証人となっていた代表者に対する債権者からの請求が,権利の濫用となるとされた事例

最判平成22年1月29日(裁判所時報1501号73頁)
A社の財務部門を法人化して設立され,A社を中核とするグループに属するX社が,上記グループに属するB社に金員を貸し付け,B社の代表取締役であるYがこの貸付けに係るB社の借入金債務を保証した場合において,B社が既に事業を停止している状況下で,X社がYに対して保証債務の履行を請求することが権利の濫用に当たるとされた事例

2. 保証協会に主たる債務者の状況につき錯誤があったとして保証契約の成立を否定した事例(東京高判平成19年12月13日判時1992号65頁)

企業実体のない会社の金融機関からの借入れについて、金融機関の依頼に基づき保証契約を締結した信用保証協会の意思表示に要素の錯誤があり、その錯誤について重大な過失があったとはいえないとされた事例

第三者の詐欺により意思表示に要素の錯誤が生じた場合と民法96条2項・3項の適用又は類推適用(消極)

3. 保証人が主債務者の破産申立てによる期限の利益喪失を知らないまま,債権者との間で保証期間その他の保証条件を変更する合意をした場合に,当該合意が錯誤により無効とされた事例
大阪地裁判決平成21年7月29日(判タ1323号192頁)

4. 融資の時点で短期間に倒産に至る破綻状態にある債務者のために締結した連帯保証契約には動機の錯誤があり債務者が破綻状態にないことを信じて連帯保証する旨の動機も表示されているとして連帯保証契約が要素の錯誤により無効とされた事例(東京高裁平成17年8月10日判決:判タ1194号159頁)

5. 商品代金の立替払契約に基づく債務の保証人の意思表示に要素の錯誤があるとされた事例(最判平成14年7月11日裁判集206号707頁)
特定の商品の代金について立替払契約が締結され、同契約に基づく債務について保証契約が締結された場合において、立替払契約は商品の売買契約が存在しないいわゆる空クレジット契約であって、保証人は、保証契約を締結した際、そのことを知らなかったなど判示の事実関係の下においては、保証人の意思表示には法律行為の要素に錯誤がある。

以 上

 

資料1

[参考]金融庁「主要行等向けの総合的な監督指針」[1]平成21年12月「「Ⅲ-3-3-1-2 主な着眼点」

①契約時点等における説明

以下の事項について、社内規則等を定めるとともに、従業員に対する研修その他の当該社内規則に基づいて業務が運営されるための十分な体制が整備されているか検証する。

①商品又は取引の内容及びリスク等に係る説明

契約の意思形成のために、顧客の十分な理解を得ることを目的として、必要な情報を的確に提供することとしているか。

なお、検証に当たっては、特に以下の点に留意する…

ハ.個人保証契約については、保証債務を負担するという意思を形成するだけでなく、その保証債務が実行されることによって自らが責任を負担することを受容する意思を形成するに足る説明を行うこととしているか。

例えば、保証契約の形式的な内容にとどまらず、保証の法的効果とリスクについて、上記イ.のデリバティブを含む融資取引と同様に、最良のシナリオだけでなく、最悪のシナリオ即ち実際に保証債務を履行せざるを得ない事態を想定した説明を行うこととしているか。

また、必要に応じ、保証人から説明を受けた旨の確認を行うこととしているか。

ニ.連帯保証契約については、補充性や分別の利益がないことなど、通常の保証契約とは異なる性質を有することを、相手方の知識、経験等に応じて説明することとしているか。

(注1) 「補充性」とは、主たる債務者が債務を履行しない場合にはじめてその債務を履行すればよいという性質をいう。

(注2) 「分別の利益」とは、複数人の保証人が存在する場合、各保証人は債務額を全保証人に均分した部分(負担部分)についてのみ保証すれば足りるという性質をいう。

ホ.経営に実質的に関与していない第三者と根保証契約を締結する場合には、契約締結後、保証人の要請があれば、定期的又は必要に応じて随時、被保証債務の残高・返済状況について情報を提供することとしているか。

ヘ.信用保証協会の保証付き融資については、利用する保証制度の内容や信用保証料の料率などについて、顧客の知識、経験等に応じた適切な説明を行うこととしているか。

②契約締結の客観的合理的理由の説明

顧客から説明を求められたときは、事後の紛争等を未然に防止するため、契約締結の客観的合理的理由についても、顧客の知識、経験等に応じ、その理解と納得を得ることを目的とした説明を行う態勢が整備されているか。

なお、以下のイ.からハ.の検証に関しては、各項に掲げる事項について顧客から求められれば説明する態勢が整備されているかに留意する。

イ.貸付契約

貸付金額、金利、返済条件、期限の利益の喪失事由、財務制限条項等の契約内容について、顧客の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由

ロ.担保設定契約

極度額等の契約内容について、債務者との取引状況や今後の取引見通し、担保提供者の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由

ハ.保証契約

保証人の立場及び財産の状況、主債務者や他の保証人との関係等を踏まえ、当該保証人との間で保証契約を締結する客観的合理的理由

a.根保証契約については、設定する極度額及び元本確定期日について、主債務者との取引状況や今後の取引見通し、保証人の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由

b.経営に実質的に関与していない第三者との間で保証契約を締結する場合には、そのような第三者に保証を求めること自体に批判があることを踏まえ、当該第三者と保証契約を締結する客観的合理的理由

c.経営者等に保証を求める場合には、家計と経営が未分離であることや、財務諸表の信頼性に問題があるような中小企業の場合、「経営者の個人保証には、企業の信用補完且つ経営に対する規律付けという機能が認められる」とされる一方、代表者であることをもって一律に保証を求めることについて様々な批判があることを踏まえ、当該経営者と保証契約を締結する客観的合理的理由

[③契約の意思確認]

イ.契約の内容を説明し、借入意思・担保提供意思・保証意思があることを確認した上で、行員の面前で、契約者本人(注)から契約書に自署・押印を受けることを原則としているか。

また、例外的な書面等による対応については、顧客保護及び法令等遵守の観点から十分な検討を行った上で、社内規則等において明確に取扱い方法を定め、遵守のための実効性の高い内部けん制機能が確立されているか。

(注) いわゆる「オーナー経営」の中小企業等との重要な契約に当たっては、形式的な権限者の確認を得るだけでは不十分な場合があることに留意する必要がある。

ロ.a.いわゆる捨印慣行の不適切な利用、及びb.契約の必要事項を記載しないで自署・押印を求め、その後、行員等が必要事項を記載し書類を完成する等の不適切な取扱いを防止するため、実効性の高い内部けん制機能が確立されているか。

ハ.銀行として貸付の決定をする前に、顧客に対し「融資は確実」と誤認させる不適切な説明を行わない態勢が整備されているか。

④契約書等の書面の交付

貸付契約、担保設定契約又は保証契約を締結したときは、原則として契約者本人に契約書等の契約内容を記載した書面を交付することとしているか。

なお、検証に当たっては、特に以下の点に留意する。

イ.銀行取引約定書は、双方署名方式を採用するか、又はその写しを交付することとしているか。

ロ.貸付契約書、担保設定契約書及び保証契約書については、その写しを交付すること等により、顧客が契約内容をいつでも確認できるようになっているか。

ハ.取引の形態から貸付契約の都度の契約書面の作成が馴染まない手形割引、手形貸付については、契約条件の書面化等、契約面の整備を適切に行うことにより顧客が契約内容をいつでも確認できるようになっているか。

(3)貸付けに関する基本的な経営の方針(クレジットポリシー等)との整合性

与信取引面における説明態勢については、各銀行の貸付けに関する基本的な経営の方針(クレジットポリシー等)との整合性についても検証する必要がある。

その際、例えば以下のような健全な融資慣行の確立と担保・保証に過度に依存しない融資の促進の観点に留意する。

健全な融資慣行は必ずしも担保・保証に頼ることではなく、貸付けは、借り手の経営状況、資金使途、回収可能性等を総合的に判断して行うものであることを認識し、また、「事業からのキャッシュフローを重視し、担保・保証に過度に依存しない融資の促進を図る」、「第三者保証の利用に当たっては過度なものとならないよう」にするとの観点から、経営の方針としてどのように対応しようとしており、当該方針が実際の説明態勢にどのように反映されているか。

[1] http://www.fsa.go.jp/common/law/guide/city/03c1.html

 

資料2

http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2006/060331daisanshahoshou_kinshi.htm

信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について

平成18年3月31日

中小企業庁金融課

金融機関が中小企業に融資を行う際に、この企業の経営に直接関係のない第三者を保証人として求める商慣行については、現在は減少傾向にあるものの、今なお存在しております。

事業に関与していない第三者が、個人的関係等により、やむを得ず保証人となり、その後の借り手企業の経営状況の悪化により、事業に関与していない第三者が、社会的にも経済的にも重い負担を強いられる場合が少なからず存在することは、かねてより社会的にも大きな問題とされてきております。

このため、中小企業庁では、信用保証協会が行う保証制度(注)について、平成18年度に入ってから保証協会に対して保証申込を行った案件については、経営者本人以外の第三者を保証人として求めることを、原則禁止とします。

ただし、下記のような特別な事情がある場合については、例外とします。なお、地方自治体の制度融資で第三者保証人が必要と定められているものについては、平成18年度のできるだけ早い時期に見直すこととします。

 

(注)信用保証制度とは、信用保証協会が債務保証をすることにより、中小企業者の信用力を補完し、主に民間金融機関からの融資を受けやすくする制度。

 

1.        実質的な経営権を有している者、営業許可名義人又は経営者本人の配偶者(当該経営者本人と共に当該事業に従事する配偶者に限る。)が連帯保証人となる場合

2.        経営者本人の健康上の理由のため、事業承継予定者が連帯保証人となる場合

3.        財務内容その他の経営の状況を総合的に判断して、通常考えられる保証のリスク許容額を超える保証依頼がある場合であって、当該事業の協力者や支援者から積極的に連帯保証の申し出があった場合(ただし、協力者等が自発的に連帯保証の申し出を行ったことが客観的に認められる場合に限る。)

 

 

民法改正(債権関係・債権法)に関する意見書です。ご自由にご覧ください。