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2 債務者が複数の場合 (3)不可分債務

現行民法の下において,不可分債務には,性質上の不可分債務と意思表示による不可分債務とがあり(同法第428条参照),可分給付を目的とする債務を意思表示により不可分債務とすることも連帯債務とすることもできる。これは,連帯債務には多くの絶対的効力事由が設けられているのに対し,不可分債務にはそれが設けられていない(民法第430条の括弧書部分)という効力の差異があるためである。 ところで,前記(2)イにおける検討の結果として,連帯債務における絶対的効力事由を絞り込むこととする場合には,不可分債務と連帯債務との間に効力の差異がなくなる可能性がある。 前記(2)イの検討結果に依存する問題であるが,仮に両者の効力の差異がなくなるとすれば,不可分債務は専ら不可分給付を目的とし(性質上の不可分債務),連帯債務は専ら可分給付を目的とするという整理をすることも考えられるが,この点について,どのように考えるか。

[意見]不可分債務は性質上不可分債務,連帯債務が専ら可分給付を目的とするという整理方法に賛成。

[理由] 現行法では,可分給付を目的としながら,合意により不可分債務とすることが出来るなど,概念としてわかりにくい。

(関連論点)

民法第431条は,不可分債務が可分債務となったときは,各不可分債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負うと定めているところ,この規定の趣旨については,不可分債務というのは,給付が分割できないことから認められた特別の概念であり,給付が分割できるようになった場合には,分割債務となるのは当然であると説かれている。 しかし,債権の目的が不可分給付から可分給付となったときに必ず分割債務になるというのでは,当事者の意思(とりわけ,不可分債務の担保的効力を重視していた債権者の意思)に反する場合があることが指摘されている。 そこで,不可分債務について,当事者間に反対の特約がある場合には,債権の目的が不可分給付から可分給付となったときに,分割債務ではなく連帯債務となることを認めるべきであるとする見解がある。 この点も,前記「(2)イ連帯債務者の一人について生じた事由の効力等」の検討結果と関連する問題であるが,どのように考えるか。

[意見]合意により分割債務ではなく連帯債務となることを認めるべきである。

[理由]合意による連帯債務かを認めるに過ぎず,特に不都合はない。

民法改正(債権関係・債権法)に関する意見書です。ご自由にご覧ください。