« | »

2 債務者が複数の場合 (2)連帯債務 ア 要件

ア 要件

現行民法は,「数人が連帯債務を負担するときは」(同法第432条)との文言から始まる規定を置くのみで,連帯債務となるための要件を明示していない。この点については,一般に,法律の規定によるほか,関係当事者の意思表示によっても連帯債務が成立すると解されており,これを条文上も明らかにすべきであるという考え方があるが,どのように考えるか。

[意見]成立要件を明確に条文化することについては賛成

[理由]補足説明のとおり。

(関連論点)

商法第511条第1項は,「数人の者がその一人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する」ことを規定する。民法上は連帯とする旨の明示又は黙示の意思表示が必要とされているところ,商法第511条第1項は,数人が一個の商行為によって債務を負担した場合について,商取引の安全を図る観点から,特別規定を設けたものである。 この商法第511条第1項の規定については,取引の安全を図る必要性は商取引のみならず民事取引にも妥当することから,民事の一般ルールとすべきであるとの見解がある。この見解によれば,数人が一個の商行為によって債務を負担した場合に限定せず,数人が一個の行為によって債務を負担した場合には広く一般的に連帯債務の成立を認めることになる。この見解について,どのように考えるべきか。

[意見]商法511条の一般ルール化については,反対する。

[理由]民事上のルールとして,数人が一個の行為により,債務を負担した場合に広く一般的に連帯債務の成立を認める必要は無い。当事者の合意で連帯して債務を負担するという内容が認められた場合に,連帯債務とすればよい。このような一般ルールを認めることは,民法の商事法化につながるのであり,連帯債務となる以上は,独自の意思表示が必要であると考えるべきだ。

民法改正(債権関係・債権法)に関する意見書です。ご自由にご覧ください。